中国古代の共同体慣行である試と国家権力との関係の考察により、後漢国家が、在地勢力の社会的規制力を利用して「寛治」と称される政治形態をとっていたことを石刻史料を中心に論証した。中国における儒教は、支配の具体的な場においては、国家が在地勢力の規制力を利用することを正当化する理念として顕在化しているのである。
『東方学』85,1993年1月,53~67頁