後漢国家に特有な支配は,前漢時代の儒教的支配である「徳治」とは異なる「寛治」であった。「寛治」とは,後漢国家の支配の具体的な場において,在地社会における豪族の社会的な規制力を利用する支配であり,後漢時代における儒教は,それを「五教在寛」という理念によって正当化した。こうして後漢国家は,「寛治」という儒教的な支配によって,自己の支配を豪族を利用しながら現実のものとなし得たのである。
『中国史における教と国家』雄山閣出版,1994年9月,135~154頁