三国時代の皇帝権力の端緒となった後漢末の群雄の中から袁紹と公孫瑰を取り上げて、政権の構造を分析し、後漢末期の社会的指導者層である「名士」層を極端に尊重した袁紹も、逆にそれを徹底的に抑圧した公孫瑰も、政権を保持し得なかったことを論証した。三国時代を形成していくものは、「名士」と自己の権力をせめぎあった曹操・劉備・孫権なのであった。
『吉田寅先生古稀記念アジア史論集』東京法令出版,1997年2月,45~61頁